オレオのアニメ・ラノベ・ネット小説評論とか

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異世界あるある考察 「奴隷」について詳しく解説

  自称アニメ・ラノベ評論家。オレオだ。あるあるを書こうと思ったら内容が長くなってしまったので、今回は異世界における奴隷について話していこうと思う。

 (4月3日追記:中世は奴隷の扱いが割とよかったととらえられる文面がありますが、いつの時代も奴隷の虐殺や過労死は起きており、これは決して繰り返されるべきではありません。それをわかったうえで記事を書いています。文章は訂正していませんが、それを了解したうえでお読みください。)

 

異世界あるある「主人公が奴隷を買うのは当たり前」

 

 出会うための条件が「金がある」ということだけなので出しやすいのか、かなりの頻度で出てくるキャラクター「奴隷」。せっかくなので、実在した奴隷制度を交えて紹介する。

 ライトノベルにおける「異世界」というのは、中世ヨーロッパの街並みをモデルにした街が登場することが多いが、治安や生活水準などはそれよりも発展しているのか便利な点がいくつか見受けられることが多い。その中で奴隷制度はというと、ざっと調べてみたとこ古代ローマの奴隷のイメージが強いようだ。

 

 古代では、戦争に敗北した国の捕虜や征服された国の国民が奴隷になるというのは世界中に見られたらしく、珍しいものではなかったという。奴隷とひとことで言っても、時代や場所によって扱いが異なっている。

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 例えば中世ヨーロッパでは、輸出できるものが少なかったために労働力として奴隷を他国に輸出していたらしい。また、別の地域では戦争のための人員として奴隷が使われていたそうだ。ちなみに中世の日本では、飢餓をしのぐために自ら身売りをするということもあったそうだ。北アフリカなどでは海賊によって敵対勢力の住民を拉致し、奴隷に落とすということも行われていた。

 おそらく異世界奴隷のモデルとなった古代ローマでも、時がたつにつれて扱いが変わっていく。そもそもローマには報酬に金銭を要求する職業を卑猥なものだとする習慣があったらしく、そのような職業を奴隷にやらせていたらしい。最初期は農民にとっての大切な労働力であり、扱いはそれほどひどくなかったそうだ。だが、ローマが他の国を侵略し始めると、征服した国の人々を奴隷にしたため、奴隷の値段がどんどん下がっていった。これにより、奴隷への扱いは悪くなっていき、人権が全くない酷使される存在になっていったそうだ。虐待の対象になったとの記述もある。奴隷による反乱も何度か起きている。みんながイメージする奴隷はこのあたりのものではないだろうか。その後、2世紀以降は奴隷の保護法が制定され、ある程度待遇が緩和されることになった。

 

 さて、あらかた奴隷の説明が終わったところで、ライトノベルにおける奴隷を見ていこうと思う。ここでいう奴隷はまさに人権などかけらもなく、魔法の力によって絶対服従となっていることが多い。また、いわゆる亜人が攫われたり人間が身売りしたり犯罪者が奴隷になったり、色々なケースがある。背景が詳しく話されている作品はあまりないため、どのようにして奴隷制度が始まったのか、なんで高額で売られている割に命を軽々しく扱っても問題ないのかなど、わからないことは多い(これが最近のネット小説にありがちな「ここまでは説明しなくてもわかっていて当たり前」という暗黙の了解だ)。

 主人公が奴隷を買う理由は、だいたい

「奴隷の子をたまたま見かけて一目惚れ」

「戦力となる人員の確保」

「待遇が悪い人を助けたいTHE・主人公精神」

「悪い貴族を殺したら手に入った」

である。正直、あまり大した理由がなく、現代日本にいた割にはなれるのが早いなあと思わなくもないが、そんなこと言っていたらツッコミ切れないのでそこには触れない。奴隷という立場は主人公を立てるのに丁度いいし、主人公に服従するためとても扱いやすいキャラクターである。しかも、奴隷を扱う人物と繋がりができて人脈が広がるし、主人公に常識を教えるなどいろいろ役に立つイベントである。奴隷は何かしらの暗い過去を持っているため、その後の展開もしやすい。ある意味万能キャラだ。ただ、のちのち奴隷という立場が忘れ去られてしまいただのヒロインと化す場合があり、別の奴隷は完全に無視することもある。もう少し複雑な事情を作ったり世界観を広げるために工夫できることがあるのではないかと思うところが多く見受けられる。

 異世界は地球ではないので、昔の奴隷制度をまねろというわけではないが、その世界にはその世界なりの制度の背景を作るべきであり、そうすることでより没入感が得られる作品に仕上がっていくと私は考える。

 

 

 今日は奴隷制度を考察したが、奴隷に限らず、異世界ものの作品は過去について詳しく触れないことが多い。主人公を知的なキャラクターとして描きたい場合は特に、世界観について語る部分(つまり主人公が歴史を調べる場面)があるほうがしっくりくるし、より読者を物語に引き込むことができる。ただ起こった出来事を書くだけではわからないことが、作品の世界にはたくさんあるはずだ。時間があるときに、「実はこのキャラクターにはこういう過去があるのではないか、この国はこうできたのではないか」と考えてみてはどうだろうか。