【作品レビュー①】異世界学校~国外追放されたので前世の夢を叶えます~
自称アニメ・ラノベ評論家。オレオだ。こう名乗って早1ヶ月。やっと評論家らしく作品レビューをしていこうと思う。記念すべき第1回は、
花川優奈さん作
『異世界学校~国外追放されたので前世の夢を叶えます~』
だ。小説家になろうで更新中。現在55部まであるので、気になった方は読んでみてほしい。
それではさっそくレビューしていこう!
〇あらすじ
主人公のスミス王国公爵令嬢「レベッカ・アッカリー」は、王子であり婚約者の「フラン・スミス」とその心を射止めた元平民で伯爵家の養女「クレア・フローレンス」により婚約は破棄、国外追放という目に合ってしまう。2人によれば、その理由は「レベッカは、平民の出であるクレアを馬鹿にして傷つけたから」だというのだ。レベッカは、クレアに貴族社会の礼儀を学んでもらい王子の妾としてふさわしくなってほしかっただけなのに……。
そんな時、レベッカは前世の記憶(日本人の教育学部の大学生女子)を思い出し、ここが前世でやっていた乙女ゲームの世界であることに気づく。そして、そのゲームの中でレベッカは悪役令嬢で、国外追放はそのゲームのエンディングだったのだ!
大好きな両親と離れ、ゲームでは登場しなかった隣国、ケイラー王国に行くことになってしまったレベッカ。悪役令嬢はその先で誰と出会い、何をなすのか。どういう恋愛をするのか!それとついでに王子とクレアはどうなるのか!
こんな話だ。
ここまでは2、3話の内容なのだが、ここからはその先の内容にも触れていく。
〇良かった点
・前世が干渉しすぎない
この作品、前世のことを思い出すいわゆる転生ものなのだが、思い出したからって知識チートをしたりゲームの攻略キャラを片っ端から攻略したりはしない。あくまで前世の夢だった「教師になる」ことを叶えることが目標だ。あとは少しだけ前世の言葉遣いに引っ張られたり、前世がただの大学生だったから不便にも慣れているというくらいだ。まあ、前世で好きだったものは影響されているようだが。レベッカの人格もそのまま残っていて、前世のことはただの記憶としてかかれている。
転移・転生系統の多くは地球で得た知識を使って魔法をアレンジしたり、ゲームの世界にくるならキャラクターのことを知り尽くしていて攻略し始めたりするので現実感が薄れてしまう。それに比べてこの作品は、国外追放された国がゲームでは名前すら出てこない場所だ。主人公レベッカにとってそこは完全に未知の領域であり、初めてのことだらけだから、読者は感情移入しやすいだろう。
・キャラクターの描写がとても丁寧
主人公を含め、登場人物の描写が仕草から感情まで丁寧に書かれている。第2話の両親のとの会話から一部抜粋する。
「大丈夫。私は大丈夫よ。そう、自分に言い聞かせるようにいってから恐る恐る扉のノブに手をかけ、一思いに開ける。」
(国外追放を告げられて)
「その言葉に目を見開く。お母様はさらに私をぎゅっと抱きしめた。」
「覚悟はしていたけれど、少し怖くてお母様にきゅっと掴まる。」
「お父様がそこで、苦労を思い出したようにふぅとため息をつく。」
このように、行動の描写だけで感情を表現した分が多く使われていて、その場面やキャラクターの気持ちを容易に想像することができる。また、行動に擬音を用いていることがあり、それが少し漫画っぽくて私は好きだった。
他にも、一人称視点で書かれていて主人公が思ったことがそのまま文字になっているので、主人公の気持ちになって読むことができる。主人公はたまに読者に向けて話すような描写もあり、そこがまた面白いところだ。
セリフにも工夫がみられる。あまりキャラクターごとに話し方が違わないにもかかわらず、誰が話しているのかちゃんとわかるのだ。喋っている人の「人の呼び方」が違ったり、セリフの前後に誰が話しているのか書いてあるから、変な口癖や語尾を決めなくても混乱することがない。この配慮が、読者が「物語を楽しむ心」を壊さずに読めるということにつながるのだ。
・キャラクターの過去や思い出に触れている
主人公は「前世の記憶」と「故郷においてきてしまった記憶」があるが、それがふとしたきっかけで思い出されて語られるシーンがいくつかある。主人公は当時何が好きだったのか。何に惹かれたのか。そういうことを設定していないと書けないことだ。こういう設定一つ一つがキャラクターを形作っているので、とても重要なことだと思う。
・魔法について独自の設定がある
みんな大好き「魔法」にもこの作品独自の設定があり、ちゃんと国の成り立ちなどの世界観にかかわっている。この記事作成時点では物語に大きくかかわっていないが、どう絡んでくるのか楽しみだ。
〇気になった点
・「……」の多用
この作品に限らずネット小説にありがちな「……」。これは主に黙っているときに使う記号だが、使いすぎると何が言いたいのか(黙っているのだが)わからなくなってしまう。というか、想像で保管しなければならなくなってしまう。なぜかというと、「黙る」ときというのはたくさんあり、毎回理由が異なるからだ。例えば、ぼーっとしているとき、考え事をしているとき、絶句しているとき、自信がなくなってしまったとき、あえて間を作りたいとき、言葉を出すことも難しいときなど。これらを全て「……」で表すのは無理があるのだ。便利ではあるが、言葉で説明したほうが良いこともあるだろう。
・人間以外の動植物の描写が少ない。
先ほど、人間の描写が素晴らしいということを書いたが、逆にそれ以外の生物について触れられている文があまりなかった。ケイラー王国は自然の国だと説明されているので、これは少し残念だ。動植物や自然の風景は忘れがちだが、世界観を形作る大事な要素の1つだから、主人公たちが外にいるときは書いてみると良いだろう。
・恋愛についての表現がありきたり
この作品は主人公と男性キャラの恋愛描写が出てくるのだが、その他の感情に比べてこの部類はよくあるものが多い。33話より
「ドキッと心臓が跳ねた。」
「彼女の白い肌も、ほんのり赤く染まっていた。」
という感じだ。他の描写はとても上手なので、少し残念だと思った。他の感情と同じように、ちょっとした仕草や癖などで表せるようになればそのシーンの緊張感や高揚感をもっとリアルに描くことができるだろう。
〇感想
私は女性主人公の作品をほとんど読んだことがなく、アニメでもそういう作品はみてこなかった。だから最初は少し不安だったのだが、ふたを開けてみると男性でも読みやすく、主人公の気持ちが違和感なく理解できたため素直な気持ちで楽しむことができた。特に、たまに前世の記憶に引っ張られてお嬢様らしくない行動するところが面白かった。それに、どのキャラクターの人間味にあふれていて、花川優奈さんが伝えたいことがストレートに伝わる話だった。これから、主人公たちの恋愛、目標がどうなっていくのか。まだ出てきていない設定はどんなものなのか。非常に楽しみが多い作品だ。
以上で、この作品のレビューを終了する。作品の良さを上手く伝えることはできただろうか。少し不安であるが、精いっぱい書いたつもりだ。もし小説を執筆している人がいたら、これはぜひ読んでみてほしい。ストーリーも素晴らしいのだが、参考になる書き方がたくさんあるはずだ。
この作品を勧めてくださった作者の花川優奈さん、ありがとうございました。乾燥にも書いた通り、とても楽しく読むことができました。この作品で勉強できたことはとても多かったです。これからも応援しています。
ここからは完全に自分の話になる。
これからも、気になった作品があればこうやってレビューしていくつもりだ。作品を広めるためでもあるが、レビューを書くことで、その作品の良いところをいろんな人と共有したいのだ。それを見た人が、より良い作品を書けるように、これからもアイデアを書いていく所存だ。