オレオのアニメ・ラノベ・ネット小説評論とか

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読者に気に入られる「世界観」の紹介方法とはPrat2

 自称アニメ・ラノベ評論家。オレオだ。昨日「オーバーロード」の1~5巻を買ってきたので、少しずづ読んでいく予定だ。実は友人から貸してもらったことしかなく一度しか読んでいなかったので楽しみにしている。これは「なろう系」小説の大人気作品であり、構成が非常によくできているので、今度読み込んで学んだことを書きたいと思う。

 

 

 今回は前回の続きだ。前回紹介した設定を、どのように紹介するべきなのかについて話す。なお、今回に限っては私の個人的な好みが反映されている可能性があるので、1つの意見としてとらえてほしい。

 

〇違和感をなくすために気を付けること

 

 世界観を紹介するとき、読者にすべての設定をわかりやすく伝えるのは当たり前のことだ。だが、気を付けないといけないことが存在する。「その世界の人々にとって当たり前のことを、当たり前ではないかのように説明してはいけない」ということだ。ピンとこないかもしれないので例を挙げる。

 

 日本人が「いただきます」といって食事を始めるのは何も不思議なことではない。誰もが当たり前にやっていることだ。だが、「いただきます」と似たような文化がない人がごく当たり前の日本の食事風景を見たときに、「いただきます」は意味が分からない動作だ。こんな時、どう説明するべきだろうか。日本人にとっては当たり前だから、わざわざ見知らぬ世界から来た人に向かって事前に「いただきますというんですよ」というのは違和感がある。それが当たり前であり、他のところの人はやらないとは思わないからだ。

 では、どうするのが自然なのか。それは、当然「わからなかった方が聞く」ということだ。そして、わからなかった方の人が学び、それについて理解するわけだ。

 

 と、このように、「その世界の人々」は基本的に「自分が住んでいない世界」が自分の世界のあたりまえが当たり前じゃないとは思わない。自分の常識で物事を図ろうとするのだ。これでもわからないか。では、もっとわかりやすくしよう。

 

 あなたは異世界に転移してしまった。その世界は地球と違って、1日が20時間しか無いうえに夜は凶暴な生物がたくさん出るがそのことを知らない。あなたは状況把握のために近くの人に説明を求める。この時、上記の2つの事柄の内、教えてくれる可能性があるのは、後者だけである。後者は「ここ一体の土地だけの現象である可能性」があるので注意してくれるかもしれないが、前者はこの世界の住民にとって当たり前のことだ。「まさか目の前の人が元は1日が24時間の世界で暮らしていた」とは思わない。前者は必ず「転移してきたあなた」が質問しないと答えが得られないのだ。

 

 こういうことだ。その世界の住民にとって、誰もが知っている事柄を説明するというイベントは起こりようがないため、その境界を見極めることが重要だ。でないとゲームの超超超丁寧なチュートリアルキャラクターになってしまう。それを利用して、主人公がハプニングに遭遇するという展開も作れるかもしれない。

 

〇紹介方法は何が最適か

 

 結局どういう風に「世界観」を説明するべきなのか。私が導き出した結論は、「主人公に学ばせて説明させる」ことだ。つまり、読者と主人公は同じ時に設定に気づくことができるわけだ。正直、割とたくさんの人がやっているとは思う。だが、先ほど言った通り主人公の質問に何でも勝手に答えてくれる便利キャラクターを作ってはいけない。時には人に聞き、本で調べ、身をもって知ることが重要なのだ。

 こうすることで、主人公が知らなかった真実によって危機にさらされたり、何かしらのハプニングが起きたときに、読者も一緒にその気分を味わうことができるのだ。主人公と読者の一体感が何より重要な小説において、これはとても重要なことである。

 これは、読者に先に物事の真実や裏があると思わせるような情報の開示をむやみにやるべきではないということでもある。例えば、「のちにこれが○○を引き起こすことを主人公はまだ知る由もない」のようなことは、あまり書かない方がいい。書籍の次巻へのつなぎなら良いかもしれないが、ネット小説に限ってはそんなことしても読者の驚きを奪うだけになってしまう。

 主人公が最初から「異世界の住民」である場合は、ちょっとやり方が変わってくる。主人公の言葉ですべて説明できてしまうので、当たり前のことをわざわざ口に出して説明する機会がないのだ。そういう時は、何か物ごとに合わせて説明すると自然に見える。「1日が20時間しかない」のであれば、

「20時近くを示す時計を見て、もうそろそろ日をまたいでしまうとつぶやく」

ようなシーンがあればわざわざ説明しなくても読者はわかってくれるのだ。こういう小さな動作でも、世界の設定の一端は見えてくるのである。

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 どうだっただろうか。例を多めに書いてしまったので長くなってしまった。わかりやすいと思って書いているのだが、うっとうしいと思ったりわかりにくいと思う方がもしいれば言ってほしい。

 説明口調で全部世界観についてまとめて書いてしまう人がいるが、そんなことしなくても伝える方法はたくさんある。読者の想像力はとても豊かなのだ。さりげなく物語の一部に地球とは違う設定を散りばめてみると、より「異世界である」ということが伝わる。面倒くさがって地球と同じような設定にせず、思いっきり別の世界にしてしまうことが「ファンタジー」の第一歩のような気がする。

 

 

 見え見えの罠に引っかかるやつがいないように、見え見えの物語は面白さが激減してしまうのだ。書き方が上手い作家は、そういう小さな努力を積み重ねているのだと、この記事を書いて改めて感じた。