オレオのアニメ・ラノベ・ネット小説評論とか

主にネット小説に関するアイデアを投稿しています。もし気に入ったものがあれば、自由に使っていただいて構いません。よければ、Twitterに、執筆している作品の紹介とともに連絡してみてくださいね。

ちょっと待った。「主人公の意外な一面」、次の章まで取っておかないか?

 自称アニメ・ラノベ評論家。オレオだ。小説に限らず、物語には「自分が経験したことがないこと」を書くことが多くある。例えば、政治家や警察官などは、見たことはあってもその実際の仕事を詳しく知る機会はあまりない。地球以外のことを書くなら、それこそほとんどのことを想像して書くしかない。
 しかし、それでも調べられることはたくさんある。「他の作品でこうだったから」という理由で考えることをやめるのではなく、自分なりにそれについて調べたり、もしくは新しく考え出すことが大切だと私は思う。そうすることは、また新たな考え方が生まれ、物語の可能性を、さらには人間の思考そのものすらも広げてくれるのだ。


 今回は、「主人公の意外な一面」がテーマだ。意外な一面とはつまり、「いつも冷酷な主人公が子供には優しい」とか、「ずっと弱気で引っ込み思案だった主人公が今回は敵に果敢に突っ込んでいった」などのことだ。前者は「今までは見せてこなかったけれど、今発覚した一面」。後者は「物語におけるキャラクターの大きな成長、分岐点」。だいたいこの二つに分けられるのではないだろうか。それらの「意外な一面」の中でも、前者について話していく。

〇タイミングを計れ

 先に、タイミングの話をしよう。注意事項のようなものだ。
 この「今まで見せてこなかったけれど、今発覚した一面」という要素は、物語のスパイスであると言える。たまに入れるからインパクトが大きいし、読者は引き付けられるものだ。だから、毎回のように入れるのはおすすめしない。
 さらに、話のどこで書くのかも非常に重要だ。シチュエーションによっては、そのキャラクターの印象ががらりと変わることもあるため、できるだけ読者の目に留まるように配置しなければならない。状況が動いている最中にやるのはもったいないだろう。話の終盤、問題が解決した後にやるのが一番簡単でわかりやすいと思う。


〇物語に勢いがあるときには使わない

 人気の話ではないぞ。物語が盛り上がっているときの話だ。先ほども言った通り、物語のスパイスであるこの要素は、物語に大きな影響を与えうる効果を持っている。人気キャラクターであればなおさらだ。しかし、これは基本的に「1キャラクターにつき1回しか使えない非常に貴重な手段」であり、「脇役では効力があまりないことが多い」ため、実は扱いが非常に難しい。正確には1回しか使えないわけではないが、何度もやると効果がガタ落ちするので、やめたほうが良いと思っている。
 だからこそ、物語に勢いがあるときには使ってはいけないのだ。ネット小説は、「作者のやる気」が1番大切だ。勢いがあるときは、筆が乗ってサクサク書けると思うが、それは長くは続かないだろう。勢いがなくなってしまうと、キャラクターが生き生きしづらくなる。新しい話を思いつけなくなることもあるかもしれない。
 そんな時、キャラクターが意外な一面を見せることで、他のキャラクターがそれに反応したり、新たな過去が発覚したりする。そうしてまた書くことが増えるし、読者も先が気になるというわけだ。

〇あえて見せないで、取っておく

 またこんな話だが、最近のネット小説の場合は「見せられるタイミングで全部見せてしまおう」という作者がとても多い。書けるイベントはすぐに書いてしまったり、ヒロインが立て続けに出てきたりするのだ。さて、これは一見、色々な要素が詰まっていて豪華なように見えるが、「後が続かなくなる」「後のハードルが高くなる」という致命的なデメリットが存在する。「なろう系」の序盤がいい例だ。最初にテンプレ的な要素(チート能力披露や戦力外通告など)をあらかた終わらせた後、一気に勢いがなくなる。試行錯誤して、あがいている主人公を見て楽しんでいたのに、いきなり強くなりすぎたせいで敵が弱くなってしまう。たった数話で物語の趣旨が変わってしまう上に、作者はさらに強い敵を出さなければいけなくなってしまう。物語として破綻してしまうのだ。まあそれは極端な例であるとしても、詰め込みすぎるのは良くないのだ。
 そこで、「あえて意外な一面を見せずに、次の機会まで取っておく」という選択肢を紹介しよう。
 例えば
「いつも冷淡で表情があまり変わらない主人公が、実は人の死を誰よりも悲しみ、涙を流す人だった」
としよう。これが「意外な一面」。読者を引き付けたいポイントだが、今は調子が良くて、筆が進む。読者もまだまだ飽きなそうだ。そういう場合、あえてその場では主人公を泣かせず、いつもの表情のままでいてもらう。というよりも、我慢してもらう。そしてその後、別の話になったときに、もっと大事な人が亡くなることがあれば、その時にこのびっくり箱を開けるのだ。そうすることで、読者は1度同じようなシーンを見ている分余計に驚くし、「思い返してみるとあの時もなくのを我慢していたのかもしれないな」と考えて楽しむことができる。
f:id:ReotoAoki:20200620190018p:plain
 さらにその驚きを大きくするために、1回目の本性を明かさないときに、「その時には気が付かないけれど、後から読み返すとそう思っているのが分かる」書き方をするのが理想である。伏線を張るということだな。しかし、それは少しでもやりすぎると「もしかして……」と思う読者が出てきてしまうため、非常に難しい。先ほどの文なら、「死体には目もくれず立ち去った」ならばその段階では「冷酷な主人公」であるし、後から読み返すと「実はなくのを周りに見られたくなかったのだな」と考えることができる。


 どうだっただろうか。小説は、作者が思い通りに書くものではあるのだが、「読者が想像する余地」というのも大切だと思う。誰が読んでも全く同じというのは、一見完璧なように見えるが、実は発展性がないつまらないものだ。ただ事実を書くだけではなく、ちょっとした遊び心で仕掛けをしておくのも、面白い作品を作るためには必要なのである。


 何かを生み出すには、相当な労力がかかるものだ。こんなにたくさんの作家が存在していても、小説を書くのなんて簡単だなんて思ったことは一度もない。もし本当に簡単なのだとすれば、それは中身がない、生きていない抜け殻だ。ただの文字の寄せ集めに過ぎないのである。だからこそ、あなたには
「見かけの数字にとらわれず、本当に作品を愛してくれる読者に出会える作品」
を作っていってほしい。そしてそれを作るための助けになることが、私の目標だ。